トラブルの盗み聞き

トラブルの盗み聞き

トラブルの盗み聞き

家の近くのホームセンターに歩いて買い物に行った帰り道、面白いものを目撃しました。30後半か40歳くらいの中年男性が、自転車の若者を捕まえてお説教していたのです。

私はこういうものを見かけると、やたらと興味を抱いてしまい、人間観察をしたくなってしまう性格をしています。なので、そのおじさんと若者のやりとりも気になり、さりげなく近づいてこそりと分からないように観察することにしました。

「あのなぁ、だから危ないだろうと言ってるんだよ!」

「はぁ……」

どうやらおじさんは、若者の自転車の運転に不満を思えてお説教をしているようでした。若者の手には、携帯ゲーム機のニンテンドーDSが握られていたので、おそらくながら運伝でもしていたのでしょう。

「だいたいゲームをしながら運転なんて、常識的に考えてありえないだろう! 分かってるのかい!」

「……」

私の思ったとおり、DSが原因だったようです。しかしおじさんは一方的に若者を叱るだけで、若者は全然反応をしていません。ほとんど無反応で聞いているだけです。

おじさんは若者のその姿勢に怒りが増してしまったのでしょう。先ほどまでなんとか丁寧な言葉を心がけようと努力していたのが垣間見えたのですが、突然暴言を吐きはじめました。

さすがにこの暴言には若者もムッときたようで、その場から去ろうとしました。

しかしおじさんは、青年の乗る自転車の荷台を掴み、青年が逃げるのを阻止しました。

「まだ話は終わってないんだよ!」

さらにおじさんは暴言を掃き続け、仕舞いにはなんと、青年の頭を引っぱたいてしまいました。

「あ、いかんぞ!」と私はさすがに思いました。若者がやり返したら大変です。

私が思ったとおり、青年は自転車から降りておじさんの胸ぐらを掴んで歩道の隅へと押し退けました。そしたらおじさんはなんと、

「ひぃぃぃぃ! 助けてー! 誰か助けてー!」

と情けない声で叫び始めました。もう本当に情けなかったです。

そのおじさんの声で人は集まってきてしまいました。何人かの人が間に入って青年とおじさんを引き離しました。青年から解放されたおじさんは、周りに大丈夫ですかと心配されました。

「ありがとうございます、ありがとうございます! 私この青年のことを注意しただけなのに、突然襲い掛かってきたんですよ~」

と、おじさんは言いました。

さすがに若者も黙っていません。お前が先に殴ったんだろうと反論しました。しかし誰も信じませんでした。

見かねた私はその場に出て行き、ことの全てを見ていたことを話し、おじさんが先に手を出したことを説明しました。

おじさんはばつが悪い顔で逃げるように去っていきました。

確かに青年が自転車に乗りながらDSを弄っていたのは危ないかもしれません。でも、手を出した上に嘘をついたおじさんのほうが私はちょっと嫌な人に思えました。

私がいなかったら青年は100%悪いということになっていたでしょう。盗み聞きしていて良かったです。

青年は最後、ちゃんと「ありがとうございました」と言って帰って行きました。

見せるべきは笑顔か涙か眉間のシワか

「あんたにはかなわない」と言われて喜んでいいのか、怒るところなのかわからずに悩んでいます。褒められたのでしょうか。それとも、呆れられただけでしょうか。

いつもなら朝の電車で席を確保できるのに、今朝はタイミングが悪くて座れなかったんですって。「朝からツイてない」と嘆いています。確かに席には着けなかったかもしれません。でも、電車に乗れず、時間までに着けなかったよりもずっといいでしょう。

それに自分が席に着けなかったおかげで、他の人がその席に着けたはずです。もしかしたら、その人はいるも電車で席を確保できず、珍しく座れたことを喜んでいるかもしれません。見知らぬ笑顔を思い浮かべると、温かい気持ちになりませんか?

それに距離だって、そう長くはありません。たまに立ってみれば、いつも立っている人の気持ちがわかることでしょう。

せっかくいつもより少し早めに家を出てきたのに、そんなときに限って電車が遅れるんだから…。おかげで朝から待たされることになっちゃったよと、口をとがらせます。良かったじゃないですか、少し遅れたのが電車だけで。自分が電車に遅れていたら、どうしてもっと早く出てこなかったんだと自己嫌悪に陥るでしょう。

電車が遅れたのは不可抗力で、自分が悪いわけじゃありません。それに電車が遅れたのも大幅ではなく、ちょっとだけだったのも何よりです。そのおかげで、遅刻せずに済んだのですから。もっともっと遅れていたら、着かないといけない時間にも間に合わないところでした。

体を冷やしてしまったせいで、朝からお腹が痛いと言います。お腹が痛いのは辛いけれど、何が原因なのかわからない方が不安です。体を冷やしたらどうなるのか身をもって知ったのなら、今後は体を冷やさないように気をつけることができます。

数々の嘆きや不満に笑顔で応えていたら「あんたにはかなわない」と言われてしまったのです。それから「悩みなんてないでしょう?」とも言われました。とんでもないです。たった今、頭を悩ませていますよ。

アナタの言葉を喜ぶべきか悲しむべきか、怒るべきか。自分は褒められているのかけなされているのか、呆れられているのか。笑っていいのか泣くところなのか、怒るのが普通なのか。頭を悩ませるような、あまり難しいことは言わないでもらいたいです。